感染・予防接種 | SUBSPECIALTY 専門グループ紹介 | 久留米大学医学部小児科学教室

- 感染症グループについて

私たちは臨床検体から細菌分離培養、薬剤感受性試験などを行う小児科独自の臨床細菌検査室を持つ全国でも数少ない小児感染症グループです。感染症領域での、いわゆるテーラーメイド治療を30年以上前から行ってきました。さらにウイルスゲノムの検出や定量を当研究室内で施行し、高精度な検査を早期に患者にフィードバックすることができます。
感染症は地域により治療方針が大きく変わります。東南アジアや中南米では細菌性髄膜炎の原因としてS.suisが上位にあがりますが、日本や欧米諸国ではまず診ることはありません。また、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、溶連菌等の小児で一般的な感染症の起炎菌も国や地域によって耐性状況は異なり、それに伴い治療薬も適切に判断しなければなりません。このように地域の感染症の状況や病原体の性質を理解する事で初めて適切な治療が可能となります。当研究室は福岡県南部を中心に佐賀県、大分県を含めた種々の病原体の薬剤耐性状況、耐性機序を含めた分子疫学調査を長年継続しており、結果を地域にフォードバックしています。
今後はこれら技術を若い先生に継承するとともに、新たにCentral Line- associate Bloodstream Infections(CLABSI)や難治性中耳炎で問題となる biofilmの研究を開始し、臨床および研究を通して小児感染症医の育成に勤めていきたいと考えています。

また、私たちは福岡県の予防接種センターとして基礎疾患のある児や副反応のリスクがある児に対して予防接種を行っております。予防接種の分野はいまだにエビデンスに乏しい部分も多く、今後接種症例を蓄積する事で新たなエビデンスを発信したいと考えています。
その他、毎月定例でオンライン開催による福岡地区小児感染症合同カンファレンス（産業医科大学小児科、九州大学小児科、福岡大学小児科、福岡市立こども病院など）に参加し、希少疾患や相談のある症例をお互いに持ち寄り議論を深めつつ、各施設との連携も密に行っています。

- 研修目標

世界のどこに行っても感染症の診療を行う事が出来る知識、技術の習得。

- 研修内容

1.小児領域における感染症診療全般
髄膜炎、呼吸器感染症、尿路感染症、不明熱等の入院：年間100例以上
院内、関連病院からのコンサルト: 20例/日以上
2. 易感染宿主における感染症の管理、治療
血液疾患、原発性免疫不全児の感染症の治療、コンサルト:10例/日以上
3. 重症感染症における全身管理
Sepsis, ARDSにおける全身管理
4. 基礎疾患のある小児に対する予防接種
年間：1000接種以上
5. トラベラーズワクチン
6. 結核健診
結核接触者健診：20例/年以上(久留米市保健所の委託)
7. 細菌の分離、同定、感受性試験を含めた細菌検査
8. 分子生物学的手法を用いた細菌、ウイルスの同定方法
（習得出来る手技：PCR、cloning、形質転換、RT、Realtime PCR）
9. 耐性遺伝子検出を含めた細菌の疫学調査方法（習得出来る手技：PFGE、MLST）
10. 次世代シークエンサーを用いた網羅的ゲノム検出による病原体の同定
11. 福岡地区小児感染症合同カンファレンスへの参加
12. チェンマイ大学（タイ）へ熱帯感染症の短期研修や国際学会への参加
久留米大学感染制御学講座を通じてチェンマイ大学へ熱帯感染症についての短期研修に参加可能、また欧州小児感染症学会（ESPID）に毎年演題を発表しています

専門グループ紹介イメージ

過去5年の予防接種実績
年度	2017	2018	2019	2020	2021
本数	1126	999	844	966	1005
※ 2019年度はCOVID-19の影響を受け一時的に減少

専門グループ紹介イメージ

2021年度予防接種センターでの接種理由
ワクチン	接種数
低出生体重児	411
免疫不全	178
心血管系疾患	149
アレルギー疾患	92
神経疾患	79
血液・腫瘍疾患	73
染色体異常	43
接種時の副反応	38

当科で可能な PCR / Real time PCR 検査
HSV, CMV, VZV, Parvo B19, Adeno	16S rRNA	S. aureus SCCmec, pvl, hlg
EBV-DNA定量, CMV-DNA定量	T. pallidum, Pertussis, P. jirovecii	H. influenzae fts-1
		Multilocus sequence typing; MLST